概要
Ch.1 デザイン経営とは?
Ch.2 ブランディングとは?
Ch.3 ブランディングデザインの考え方
Ch.4 ブランディングデザインの進め方
Ch.5 ブランディングデザインとは?
デザイン経営という考え方は70~80年代に登場し、日本では1992年に紺野登氏の著作『デザイン・マネジメント』(日本工業新聞)で初めて紹介されたという。これまでは主に電機メーカーや車メーカーのような、デザインを商品に使っている分野の人が取り組んできたが、2018年に経済産業省でデザイン経営宣言が発表されたことを機に、広く認知されるようになった。
デザイン経営宣言とは
デザインを経営の手段として有効活用できていないことが、グローバル競争環境における日本の弱点であることから、ブランドとイノベーションを通じて、企業の産業競争⼒の向上に寄与することを目的に経済産業省・特許庁が発表した宣言。
「デザイン経営」の効果=ブランド⼒向上+イノベーション⼒向上=企業競争⼒の向上
デザイン経営とは、何のデザイン? グラフィック?Web?プロダクト?色々あるけど...→全て。
デザイン経営=全体のデザイン。経営全体にデザインを生かすこと。
西澤氏は大学時代に建築学を専攻していた影響で、自身のデザインプロセスの根底に建築的思考があるという。建築も作家性がたいせつな重要視される部分ももちろんあるが、どちらかというと、お客様の家を一緒にパートナーシップをもって作り上げるという学問。エイトブランディングデザインでは、ブランディングデザイナーとお客様が手を取り合いながら作り上げ、その過程で、デザインという考え方を経営に生かしていく。このキャッチボールをとても大切にしている。
エイトブランディングデザインのロゴマークの8の形は、「輪違い」という家紋がモチーフとなっている。「輪違い」には「共創」という意味が込められている。このように、会社のポリシーや経営者の想いが込められたロゴは、経営のなかでコミュニケーションとして力を発揮する。
ブランディングデザイン=共創のデザイン
ブランディングデザイナー=デザイン部長
ブランディングデザイナーとは社内のデザイン部のようなもの。西澤氏がデザイン部長的な役割を担う。デザインを広く見ていくだけではなく、デザイナーの立場から経営や企画にも参画する。
「ブランド」の語源=北欧の言葉で、自分の牛がわかるように「焼印を押す」
→他とどう区別するかということ。
「結構売れているのにあまり知られていない」
「良いものをつくっているのに売れない」
といった悩みを解決するには?
家畜を区別するためだけだと焼印だけで区別ができていたが、現代の市場でこれだけ競合だらけになってくると、ちょっと区別したところで経営が元気になっていかない。
ブランディング=差異化
他とはどう違うのかという部分をお客様に正しく伝えること。
注意! ブランディングの落とし穴
ブランディング≠マーケティング
混同してしまうと、進めているうちに、ブランディングやってたつもりなのに、いつもの販促キャンペーンになっていた! となってしまう。
根本的に違う部分は、「目的」
マーケティング≒売るゲーム
例:スーパーにある一本100円の水のボトルをどうすれば売れるのか?
→マーケティングの4P(Product, Price, Promotion, Place)を上手く組み合わせて解決する。
ブランディングの目的を「売る」ことにしてはいけない!
ブランディング≠売る
ブランディング≒伝言ゲーム
単に伝えるだと広告で良い。そうではなく、人から人に伝わるということ。デザインの力で、拡散をしていく。
売り上げにコミットしないという意味ではなく、伝言ゲームが上手くいくことで、通常のマーケティングがより効果を発揮していくという考え方。
ブランドに必要なもの(上から順番に重要!)
伝言ゲームなので、良いモノをつくるだけではだめ。伝えるのは人。ブランドの伝言ゲームのトップバッターが、熱い想いをもってプロジェクトに臨まなければいけない。その上で良いモノを作るとさらに伝わりやすい。ところが、この1.と2.を兼ね備えている会社は世の中に結構ある!
では何が足りないのかというと、3.の伝言ゲーム。良いモノを作ると売れるという時代は昔の話で、今の環境では良いモノ・サービスを作るだけではだめ。良いモノであることを自ら伝えなければならない。外部のブランディングスタッフは、このコミュニケーションチームの一員となって、伝える役割を担う。
ブランディングデザインの考え方をお客様とシェアして共創していくところから取り掛かる。そのためにエイトブランディングデザインでは、ブランディングデザインを3階層に分けている。(こちらも上から順番に重要!)
・Cコミュニケーション(ロゴ、パッケージ、Web、広告など)
デザインジャンルの細分化は精度が上がるから良い面もあるが、お客様からすると混乱する。
→トータルデザインを行うなぜなら、会社のデザイン部のような働きをするから。すべて担当できないとデザイン部とは言えない。
ただ、ブランディングデザインはトータルデザインだけではない!
これはMCCの最下層部。コミュニケーションを整えたところで、差異化できるわけではない。
・Cコンテンツ
ブランドでお客様が差異化を感じるのは、やはりコンテンツ! ここにもトータルデザインが必要。
例:高級レストラン
おいしくても接客がだめならNG.
・Mマネジメント
プロダクトやサービスを生み出す背景となる全ての経営資源のこと。
エイトブランディングデザインでは、ブランド戦略をつくるようにしている。製造設備や商流があるだけではなく、そこを密接にからめることで、きちんと戦略を打ち出すことができる。
どうしてマネジメントが強い?
→コンテンツの差異化は難しいため、マネジメントレベルでの差異化は重要。
例:本屋のブランディング。コンテンツの差異化が難しい。書籍のセレクト能力や棚などで差異化するしかない。
その本屋をマネジメントレベルでビジネスを変えたのがAmazon。
ITはとりわけ分かりやすい例ではあるが、マネジメントレベルの差異化は重要。
そのうえで、ブランディングデザインで一番大切なことは、ビジネスとして、MCCの3つの階層において、上から下の縦軸の一貫性を通すこと。
とはいえ、マネジメントだけでは成立しない。というのも、
ブランディングの差異化ではM(マネジメント)が強いが、
伝言ゲームにおいてはC(コミュニケーション)が強い。
→ブランド戦略だけでは人に良さが伝わりづらいので、上からも下からも双方向で開発を進めていくことが重要。
デザイナーの働き方は「分業」から「統合」へ
これからのデザイン経営的な働き方は「統合」。これまではマネジメントは経営者、コンテンツはプランナーやエンジニア、コミュニケーションはデザイナーが担当するなどの縦割りだったが、これだと「共創」になりづらい。デザインが表面的なものになりがちで、デザインを経営に生かせていなかった。
デザイナーは、新しいアイデアをどんどん作っていくというトレーニングを現場でたくさん積んでいる。
→その力を経営の考え方に生かす。
反対に、経営者もデザインのほうに関わってきてほしい。
エイトブランディングデザインでは、ブランディングの開発にフォーカスRPCD®というプロセスを創業時から用いている。
R(リサーチ)→P(プラン)を立てる→C(コンセプト)を作る→D(デザイン)
デザインが終わり市場に出るとまたRに戻る。
商品が何であれ、方法は変わらない。なぜなら、経営をデザインしているから。
差異化で伝言ゲームをするコツ=F(フォーカス)
ブランディングは伝言ゲームだから、強みを10個言われても、6個くらいしか伝わらない。1点に絞り込んでフォーカスすることで、うまく伝わる。
R(リサーチ)
リサーチはほとんどの場合、最低限の部分は社内で既に終わっているため、再度時間やお金をかける必要はない。
大切なのは、社内の全部門の人と確認をすること。同じ会社内でも全然見方が違うため、ワークショップを通して見方を揃えていくことで、共通の土台作りを行う。
P(プラン)
良いところと違うところを見つけながら、フォーカスポイントを探していく。
良いところを挙げて、他社とかぶっている部分は除いていく。
良いところかつ違うところがフォーカスポイント。
C(コンセプト)
コンセプトを作ってからデザインにはいる。ブランドで一番大切なことを言葉にしていく。
コンセプトはキャッチコピーではない。ブランドのコンセプトは、今後プロジェクトを進めていく過程での判断基準になる!
案がたくさん出てきたときに、これを基準に判断していく。
これを先に決めておかないと、プロジェクトが現場に下りて行ったときに(特に営業部において)数字のロジックでひっくり返されてしまう。数字は判断基準として機能しやすすぎる。なので、数字に判断基準をおいてしまうと、ブランドプロジェクトがいつの間にか、マーケティングや販促のプロジェクトにすり替わってしまう。
D(デザイン)
ブランドコンセプトの具現化。デザインすることで、コンセプトが伝わりやすくなる。伝言ゲームの速度を上げる。
市場に出して終わりではない。成功すると他社のキャッチアップが始まる。
ブランドが変わらないようにするために、変わり続けなければならない。
→フォーカスRPCD®を何周もすることでメンテナンスをし続けて、ブランドを成長させていく。
ブランディングデザインとは、「経営のデザイン」
これからのデザイナーに求められるものは?
→経営リテラシーを身につけなければならない。
経営者が話していることを理解できなければ、経営のデザインができる訳がない。
逆に、ビジネスパーソンに求められるものはデザインリテラシー。デザインは自分に関係ないと思っている人があまりに多い。デザインは経営に使えるものであり、デザインわからないからデザイナーに任せよう! はもったいない。
作るプロセスをみんなで共有することで、本当の意味での「共創」関係が実現する。
真のブランディングデザインとは?
→「経営とデザインの融合」
最後に、ブランドとは「約束と生き様」であり、最初に約束(考え方)をみんなでデザインし、その約束に従って、中で働く人たちが生き生きと仕事をしていることが大切。デザイナーは「鬼に金棒」の「金棒」を作っている。デザイナーはかっこいい金棒を作ることができるが、金棒は使わなければ意味が無い。
良い商品は世の中にいくらでもある。それを1つずつデザインしていくと元気になる。そして、その数を圧倒的に増やしていったら、日本全体が元気になる。これが、エイトブランディングデザインのコンセプト「ブランディングデザインで日本を元気にする」である。
以上が、「できる! デザイン経営塾」第1回の内容でした! 実際のセミナーでは、エイトブランディングデザインが手掛けている事例を紹介していたり、わかりやすいスライドで解説されていたりと、さらに充実した内容を楽しめました。 第2回では実践編として、クライアントであるゲストに釜浅商店・熊澤社長とブランディングケーススタディ、第3回と第4回では、ブランディングのワークショップも行う予定だそうです!
是非この機会にご視聴ください。
西澤明洋
1976年滋賀県生まれ。株式会社エイトブランディングデザイン代表。ブランディングデザイナー。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発など幅広いジャンルでのデザイン活動を行っている。「フォーカスRPCD®」という独自のデザイン開発手法により、リサーチからプランニング、コンセプト開発まで含めた、一貫性のあるブランディングデザインを数多く手がける。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana's green tea」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、サンゲツ「WARDROBE sangetsu」、芸術文化施設「アーツ前橋」、手織じゅうたん「山形緞通」、純金工芸「SGC」、農業機械メーカー「OREC」、ブランド買取「なんぼや」、ドラッグストア「サツドラ」、博多「警固神社」、など。著書に『アイデアを実現させる建築的思考術』(日経BP社)、『ブランドをデザインする!』(パイ インターナショナル)などがある。グッドデザイン賞をはじめ、国内外100以上の賞を受賞。
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