〔NO.003〕
構成=野口真弥 Noguchi Maya 文=中山薫 Nakayama Kaoru 写真=七緒 Nao
@WeWork Tokyo Square Garden
// P R O F I L E //
三宅美奈子
クリエイティブディレクター・アートディレクター
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業後、TOTO株式会社の社員デザイナー、電通プロックス・電通グループ会社デザイナー、アートディレクター、グレイワールドワイド、ピュブリシス(外資系広告代理店)、博報堂グループ会社のアートディレクター、クリエイティブディレクターを経験。その後1児の母となり、ランサーズ株式会社、QUANT株式会社にてクリエイティブディレクター・アートディレクター、大手鉄道会社グループのIT・マーケティングでのクリエイティブディレクター・アートディレクターを経て、2022年11月に独立し、現在はフリーでのクリエイティブディレクター・アートディレクターとしての活動とともに、クリエイティブ・エージェンシーのクリエイティブディレクター・アートディレクターを務める。
受賞歴: アートディレクター・映像プランナーとしてニューヨークフェスティバル金賞、ロンドン国際広告賞ファイナリスト、南米国際広告賞、他。 デザイナー・映像プランナーとしてニューヨークフェスティバル銀賞、電通賞最高賞、ACC、TCC、クリオ、ギャラクシー賞、台湾TPA、他。miyakeminako.com
媒体にとらわれない、戦略に基づいたクリエイティブを得意とする三宅美奈子。直近10年のIT・マーケティング事業会社での経験とともに、写真、イラストを使ったグラフィック広告・映像・Web、CG・アニメーションを使った映像、Webなど、直感的にブランドを体感させる多様な表現を駆使したクリエイティブを数多く手がけている。表現技術の高度化が進むなか、商業デザイン、クリエイティブにおいて基軸としていることや、今後の展望などを伺った。
「最初に入社した住宅総合機器メーカーでCG技術を習得したことがきっかけで、自宅でオリジナルキャラクターのムービーを自主制作したりしていました。広告業界に転職し、CM演出部でビジュアルアーティストという肩書きでCG、アニメーションを中心としたCMを制作するなか、電通が制作したテレビCM・ラジオ・新聞・雑誌・ポスターでニューヨークフェスティバル、クリオをはじめ、世界的に大きな賞をデザイナー・プランナーとして受賞することができました」
それがACジャパンのWATER MAN(1996年、第3回日米共同キャンペーン)だった。汚れた水によって弱っていく人間をリアルなCGとサウンドで表現したCMは、見る者に多大なインパクトを与えた。
シーグラフのスクリーニングでアメリカに出張した際、当時憧れのリズム&ヒューズやボス・フィルムなどを訪れ、「もっと視野を広げたい」と感じた三宅は、アートディレクターを目指すことを決意。そしてヴィーナスフォートのローンチ広告でのCMとグラフィックで、アートディレクターとして国際的な賞を受賞。この頃からやっと、本来やりたかったグラフィックデザインを多く手がけることができるようになったという。「当時、会社の先輩方に声をかけていただき、ありがたい機会をいただけたことを今でも感謝しています」
さらに近年は、「映像で指名をいただくことが増えた」とも。ブランディングを基点として、ネーミング、ロゴ、パッケージ、映像、グラフィック、Webと連動する企画で、三宅に白羽の矢が立つ。過去さまざまな現場で積んだ経験と実績があればこそだ。
「広告の映像ではクリエイティブディレクターが必要ですが、アートディレクター出身者は少なく、結果的にそこが自分の強みになっています」
@WeWork Tokyo Square Garden
生成AIの登場によってコンテンツの自動作成が可能になってきたが、広告におけるクリエイティブの基本は変わらないという。
「表現のしかたが変化しているだけで、商品やブランドのイメージがより多くの人に受け入れられるためにはどうしたらよいかという商業デザインの基本は変わりません。違いは、紙・映像・Webといったメディア軸で考えるのではなく、ブランディング戦略に基づいてメディアや表現形態を決めていくということです」
クリエイティブについては〝意図的な違和感〟を込めたいと考えている。
「親和性よりもみんなが見たことがない、これ何? と、ちょっとドキッとするものをつくりたいと、いつも思っています。たとえば、同じ会社のロゴを2つ並べるのはタブーとされていますが、従来のロゴの隣に新しいイラストでつくったロゴを並べることで、進化しようとしていることが伝わるんじゃないかなとか」
@WeWork Tokyo Square Garden
昔からファッションとミュージックビデオが好きで、カッティングエッジな映像からインスパイアされることも多い。
「壁紙やカーテンにカラフルな迷彩のテキスタイルが出てくるミュージックビデオがあり、それがライブでの衣装にも使われていたんです。そこから立体と平面をリンクさせてみよう! と思いついたりします」
クリエイティブの原動力は、「日常の中で人々を驚かせたい。ワクワクしてほしい!」という思い。さらに社会貢献したいという思いも強まっている。
「厳しく不透明な時代に、クリエイティブが必要。商業デザインは日常空間で人々の心にインスピレーションの
「Shibuya Hikarie Brand Promotional Movie 2015」
渋谷ヒカリエ ブランドプロモーション映像(渋谷ヒカリエ号・渋谷ヒカリエ館内にて放映) CD+AD+D+PL
CL: ©︎Shibuya Hikarie 2015年(Version with model)・2016年・2017年・2018年(Version without model)
渋谷ヒカリエの全館のブランディング映像。「渋谷で見つけた、私の居場所。ときめきと、やすらぎと。
私らしさ、光だす。Shibuya Hikarie」渋谷ヒカリエならではの魅力を全面にフォーカスした。
宇多田ヒカル「Beautiful World / Kiss & Cry」
CDジャケット・ポスター・アーティスト写真 他 CD+AD+D
CL:ユニバーサル ミュージック合同会社
UNIVERSAL MUSIC LLC ⓒユニバーサル ミュージック 2007年
『Beautiful World』エヴァンゲリヲン新劇場版:「序」テーマソング、『Kiss & Cry』日清カップヌードルTVCM FREEDOMシリーズ新テーマソング、『Fly Me To The Moon』収録。
「NIKKO MaaS」
ロゴ・Webサイト・トレインアド、他 CD+AD+D
CL:東武鉄道株式会社 TOBU RAILWAY CO.,LTD. 2021年リリース
カーボンニュートラル実現のカギを握る国内初の環境配慮型・日光地域の観光「NIKKO MaaS」。日光の四季、最大の特徴である「環境への配慮」の地球に優しい、エコ・サークルなイメージを表現した。
毎日Mac Bookと共に常に持ち歩いているのがスケッチブックと色鉛筆。「プレゼン用イメージをラフスケッチしたり、思いついたアイデアをまとめたり。手描きで描いていると心が落ち着くんです」
思うように外出できなかった妊娠中、自宅で描き始めたのが線画イラストだ。ボールペンを使い、ひたすら集中してモチーフの細部を捉えていく過程が楽しく、三宅のライフワークになっている。
自作の活版印刷の名刺
築地本願寺の重要文化財エリアに設置されたフォトスポットの花の活け込みの写真とラフスケッチ。2023年除夜会、2024年元旦会~1月6日まで展示された。近年、フォトスポットや内装などの空間演出のクリエイティブディレクションも手がけている。
※この記事はMOOK「デザインノートPremium 未来をつくるデザイン図鑑 太刀川英輔/NOSIGNER」の特集Creator in the Spotlightを再編集したものです。
2024.02.14