タニタハウジングウェア創業75周年のリブランディングでデザインしたコーポレートロゴが、「Graphic Design in Japan 2023」(JAGDA)および「日本タイポグラフィ年鑑2023」入選を果たしたマークルデザイン。創業10周年を迎え、近年は知的財産の視点を取り入れたブランディングで実績を積んでいる。
文=中山 薫 Nakayama Kaoru 写真=七緒 Nao
株式会社マークルデザイン
武井衛 Takei Mamoru (写真右)
代表取締役 アートディレクター、グラフィックデザイナー
1998年 株式会社レマンにグラフィックデザイナーとして入社。デザイン事務所、学校法人広報部、メーカー宣伝部等を経て2015年に独立し、「MARKLE DESIGN」創業。2023年11月 法人化。ヒアリングを大切に、デザインを通してお客様の課題解決に取り組んでいる。 所属:JAGDA会員、日本タイポグラフィ協会会員。
潮﨑宗 Shiozaki Tsukasa (写真左)
取締役 ブランドディレクター、弁理士
2000年 鈴榮特許綜合事務所に商標担当として入所。2005年弁理士登録。2019年「株式会社シルベ・ラボ」創設。商標・ブランドに関する案件を中心に、国内外での調査・権利化・コンサル事業などに従事。難しい事柄をやさしい言葉で説明することを心掛け、ブランド確立に取り組んでいる。
マークルデザインの社名は商品・サービスなどを表すマークに由来している。「事業規模の大小に関わらず、自分たちの想いを表したマークを持ち、事業に誇りを感じてほしい」「他社との差別化を図ることで事業成長をサポートしたい」という創業当時からの武井の思いは今も変わらない。
クライアントの規模や事業形態はさまざまで、個人経営の店舗もあれば老舗有名企業もあるため、ブランディングフローは案件によって異なる。そもそもブランディングから始まるわけではないという。
「多くはロゴやパンフレット・ホームページを作りたいなど、ツールの相談から始まります。それらのツールをデザインするだけでも仕事にはなりますが、それでクライアントの課題が解決するとは限りません。お困りごとや課題をお伺いすることで、課題解決に必要なものが見えてきます。長期間のブランディングでは、徹底したヒアリング、社内アンケート調査などを実施し、漠然としている企業理念や事業課題を言語化・視覚化したものを資料としてまとめます」(武井)
その資料を元に打ち合わせを重ね、イメージの共有を図ったところでキャッチコピーやロゴを提案。コピーやロゴによって世界観がまとまると、クライアントも顧客に対して自社の商品をわかりやすく説明できるようになるという。ブランディングの手法や型にとらわれることなく、クライアントの状況に応じてステップを踏むことを重視している。
「武井から学んだのは、クライアントの悩みや課題を拾って、それを解決することがブランディングだということでした。ロゴを作りたいという依頼が、終わってみるとロゴ以外にもいろいろなものが出来上がっていて、きちんとブランド化されているんです。ある飲食店のクライアントも初めはロゴ制作の依頼でしたが、最終的には店舗やユニフォームのデザインまで、すべてやらせていただきました」(潮﨑)
もう1つの特徴は、ロングライフブランド(長く育てていけるブランド)の視点を持っていることだ。潮﨑は、長年にわたり弁理士として商標や意匠など、知的財産に関する業務に携わっている。現在に至るまで24年間、1万5000件を超えるネーミングやロゴなどの商標登録に関する業務を行い、さまざまな業種・業態の商標や意匠を扱ってきた専門家ならではのノウハウを強みとしている。
「同じロゴ、同じネーミングで長く事業を続けることで、ブランドは育っていきます。そのためには長期にわたって使えるものでなくてはなりません。新たに開発したロゴやネーミングがすでに商標登録されているものと酷似していると使えなくなるため、必ず事前調査し、クリアしたうえでクライアントに提案しています」(潮﨑)