取材・テキスト:中山 薫
2020年に創業30周年を迎えたクリーク・アンド・リバー社(以下、C&R社)。エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、2022年2月期には売上高・営業利益ともに過去最高を更新。ゲーム、XR、Web、映像・映画、動画、漫画、小説、建築など、幅広い分野で活躍する約850名のクリエイターが社員として在籍している。そんなC&R社が運営するゲーム制作スタジオ、2DCG PlaNet Studio(以下、プラネットスタジオ)の仕事について聞いてみた。
[スタジオ紹介]
2DCG PlaNet Studio 公式サイト:https://2d-studio.crdg.jp/
ゲームの2DCGに特化した制作スタジオ。社内制作とクライアントに常駐する開発支援を行っており、社内案件だけで細かいものも含めて常時70案件ほどが走っている。東京都内をはじめ名古屋、熊本など全国5か所にサテライト拠点が存在し、各地でクリエイティブの受託制作を行う。
組織構成は、クリエイター213名、総合職12名(2022年3月現在)。2DCG分野をアート/デザイン/アニメーションの3チームに分割し、アートチームはキャラクター・背景・コンセプトアート、デザインチームはUI/UX・グラフィックデザイン、アニメーションチームはLive2D、Spine、Anima2Dなどを利用した2Dアニメーションをそれぞれ担当している。
[今回インタビューした4名]
(画像右から順に)
石原彰子(いしはら あきこ)
<デザインチーム デザイナー>
「クリエイターの生涯価値向上」という企業理念に惹かれ、2019年に中途入社。2Dデザインを経験した後、アートディレクター・プロジェクトマネージャーとしてマネジメント業務を担う。
平間則成(ひらま のりしげ)
<スタジオチーフ>
プラネットスタジオのマネジメント責任者。広告・映像・ゲームにまつわるデザイン、イラスト、アニメーションの制作など、幅広い実務を経験し、2014年中途入社。スタジオ運営などのマネジメント業務を担う。
山本瑛哲(やまもと えいてつ)
<アニメーションチーム リーダー>
コナミ㈱でデザイナーを経て2014年中途入社。チームのマネジメント業務を担う。日々のメンバーとの"1on1"(サポート目的の面談)やチーム体制構築のほか、自分自身も現役のクリエイターとして制作に携わる。
持木将人(もちき まさと)
<アートチーム 背景デザイナー>
ソーシャルゲーム、コンシューマーゲームの開発を経て2017年中途入社。イラスト制作、アートディレクターを経験した後、現在はコンセプトアーティストとしてゲーム会社の新規プロジェクトに参画中。
在籍しながら社外で働くことも可能
--プラネットスタジオでは、次のステップを見据えた働き方ができるそうですね。
平間:はい。社内はもちろん、社外でも活躍できるクリエイターを育てるための支援を行っています。最大の特長は、社内勤務と客先常駐(常時、クライアント先で仕事をする働き方)を選べる点です。社内勤務なら基礎力をつけられます。客先常駐の場合は、憧れの企業で働くチャンスもあります。自身で応募して不採用だった企業に、当社で働いてから再挑戦した結果、採用されたという例もあります。
--プラネットスタジオではどんな人が働いているんですか?
平間:とにかくゲームが好きで「ゲームに関わる仕事がしたい」という人と、デザインが好きで「自分の力を発揮するならゲーム業界だ」という人、大きく2つのタイプがあります。
石原:新しい知識を得ることは、みんな好きだと思います。それがこの仕事の適性といってもいいかもしれません。また、私は現在アートディレクターの立場なので、クライアントのニーズに応えることもやりがいになっています。
持木:僕は自分が携わった作品がエンドユーザーに届いたときの反応をYouTubeなどで見ることが次へのモチベーションにつながっています。仕事なのでつらいこともありますが、総合的に見れば「やってよかった」と思うことが多いです。
山本:僕はチームの拡大と、さらなる技術の向上を目指しています。
--アニメーションの仕事に求められるセンスとはどんなものかを教えてください。
山本:2Dと3Dの境目が曖昧になってきているので、最新技術が使われている映画を見たりして、動きを研究する意欲が求められます。
たとえば、キーとキーの間をツールが自動で補完する"キーフレームアニメーション"という技術が普及していますが、これをそのまま流すと、フレームが生まれすぎて気持ち悪いんです。そこをいかに間引いて、重力や動きを誇張しつつも嫌味にならないアニメーションにできるか、というところに重きを置いています。
--アートについてはいかがですか?
持木:ゲーム開発ソフトが普及したおかげで、誰でも高クオリティのものが簡単に作れてしまうので、どう個性を出すか、どう差別化するかが問われるようになってきました。
背景デザインについては、数年前までは高画質の写真を使って合成して作っていましたが、最近は3DのCGソフトを使って制作し、それをゲームや映像に転用する作り方が主流になっています。
さらにコンセプトアートの世界は、アニメ寄り→リアル寄り→アニメ寄りというように、トレンドが目まぐるしく変化します。常に新しい映画などを見て研究し、吸収する意欲がないと、古臭さや既視感が出てしまいます。
--マネジメントは何よりもコミュニケーション力が求められそうですね。
石原:はい。クライアントのニーズを把握する能力はもちろん、チーム全体のクオリティコントロールや制作費の管理など、いろいろな能力が求められます。
私自身、まだまだ経験を積む必要があるのですが、人と対話することについては成長できていると感じています。今後もクリエイターの成長と、働きやすい環境づくりに貢献していきたいと思います。
独自の教育ノウハウとOJT
様々な案件へのチャレンジでステップアップ
--クリエイターの皆さんは、どのようにステップアップしていくんでしょうか。
平間:プラネットスタジオでは、受託開発と客先常駐の二軸を通していろいろなスキルが身につけられるので、各々異なるキャリアを歩んでいます。社内で中長期的にディレクターやマネジメント職に進む人もいれば、得意分野で力を発揮したいと考えてフリーランスになる人や常駐先での社員化を目指す人も比較的多いですね。
--社内では具体的にはどのような案件があるのでしょうか。
平間:一例として、スマホゲームの新規開発プロジェクトひとつとっても、設定画のイラストからグラフィック、アニメーション制作など、多岐にわたって関わることがあり、時にはゲームのスタッフロールに名前が載ることもあります。
クリエイターの将来を考えて、各チームが一連のクリエイティブを1人で完成まで仕上げられる体制をとっています。
一般に、クリエイターを多数抱えている企業では分業制にして効率アップを図ることが多いのですが、それでは幅広いスキルが身につかないのです。
--客先常駐では、どのようなところに行くのですか。
平間:元々会社全体として、ゲーム業界での幅広いお付き合いがあります。そのため、誰もが知るような大手のゲーム会社をはじめとし、メタバース系のような今注目のベンチャー企業まで様々な常駐機会があります。世の中には求人情報として出ていないお話が大半ですので、独自のコネクションによる選択肢の多さは当社ならではだと思います。
--若手の人に対してはどのような教育を行っていますか。
山本:アニメーションチームは創設時から作り上げてきたマニュアルをもとに、アニメーション教育の経験がある人が基礎教育に当たっています。Live2D、Spine、Anima2Dなどの使い方はもちろん、アニメーションの概念も学んでもらいます。そのうえで、先輩の指導の下実際に案件を担当しながら、クライアントが求めているものに近いものを作れるようになっていってもらいます。
--知識や技術以外の部分はOJT(On the Job Training=新人や未経験者に対して、実務を体験させながら仕事を覚えてもらう教育手法)によって感覚をつかむのですね。他のチームにはどんなシステムがありますか?
石原:デザインチームでは、客先常駐したい案件にいつでもチャレンジできるよう「マンスリーポートフォリオプロジェクト」という取り組みを行っています。その月で一番出来のよかった作品をポートフォリオに盛り込んだり、自分の目指したい方向に進むためにはポートフォリオをどう構成したらいいかをメンバー同士でフィードバックしたりしています。
また、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)を開発する機会があまりないので、新たなサブスキルを身につけることができる"クロスキャリア制度"というものがあります。学ぶ時間を自分でやりくりする必要がありますが、スキルアップを目指す人にとって、とてもいい経験になります。デザインチームでクロスキャリアを受ける人は多いです。
平間:UI、GUIは外部委託しない企業が多いので、より高いスキルを身につけたい場合はクライアントに常駐をし、開発経験を積むこともできます。
持木:アートチームでは、若手・未経験のメンバーは社内でしっかりと制作の経験を積んだうえで、先輩のサポートのもと早くからアートディレクションを経験します。2年目からはクライアント常駐も視野に入れ、業界内で活躍ができるクリエイターを輩出するための育成が行われています。
平間:また、チームを問わず行っているサポートとして、社外で働く際にも役立つビジネスマナー研修や、新卒や未経験者を対象とした"1on1"(1対1で先輩が指導やアドバイスを行うもの)という制度もあります。
相談のプロがキャリア形成をサポート
--持木さんはどのような経緯で客先常駐をすることになったのですか。
持木:今後のキャリアアップを考えて自分から希望しました。ゲームコンテンツの背景デザイナーとしてキャリアを積んで、どんどん業界で活躍したいです! 国内だけでなく、グローバルにモノづくりができるよう成長していきたいと思います。
--具体的なキャリアプランに基づいて決断したんですね!
持木:現場に入ってクリエイターといっしょに仕事をしているエージェント(総合職)もいて、どういうステップを踏めば自分の目標を達成できるかをクリエイター目線で考えてくれるんです。絵に関心があって、クリエイターとしてキャリア形成したい人にはとても働きやすく、楽しい環境だと思います。
--目標があっても次に進む自信がないというような場合は、どうしたらいいんでしょう?
平間:スタジオの中に「キャリア相談室」というものがあって、完全非公開で相談に応じています。当社では入社時に"3年キャリアプラン"を設定するんですが、もうすぐ3年というタイミングで「次に何を目指せばいいのか」と迷って利用する人も多いようです。
持木:じつは僕も1回利用しました。
平間:そうだったんだ。解決した?
持木:めちゃめちゃスッキリしました! いろいろ考えすぎて不安になって焦ったり、勝手に自信をなくしたりした時期があったんですが、相談したら考えがシンプルになり、「どうなりたいか」「そのためにはまず何をやるか」を正しく整理することができました。何をやればいいかがわかって、モヤモヤがなくなりました。
石原:私もデザイナーとして仕事を続けるか、マネジメントの道に進むか悩んでいたときに利用しました。私は今まで、デザインで評価されることが自分のやりがいだと思っていたんですが、いろいろなことを整理してみたら、人に喜んでもらうことがやりがいで、デザインは手段だったということを気づかせてもらえたんです。「チャレンジして駄目だったらやめさせてもらえばいい。失うものはないよ」と背中を押してもらって、自分で答えを出すことができました。
--自分がこれまでやってきたことを整理する"棚卸し"の作業ですね! どんな方が相談に乗っているんですか?
平間:もとはこのスタジオのチームリーダーだった人物なんです。メンバーの相談を受けているうちにキャリアコンサルティングに目覚めていって、コーチングなどの勉強をして独立し、今は社外の専門家という立場で相談に応じています。
またキャリア相談室のみならず、各チームにチーフ、ディレクター、チームリーダーがいて、誰にどんなことを相談してもよい体制が整っています。
--それは安心です。いろいろな方に相談できるような体制も整っているんですね。最後にどのような人材を求めているか、お聞かせください。
平間:プラネットスタジオでは、「現在(いま)の自分を超えろ」というビジョンを掲げています。会社のためではなく、クリエイター1人1人の将来に向けて、去年より今年、昨日より今日と、必ず成長していてほしいという願いを込めています。
僕はさまざまな企業で経験を積んできましたが、ここまで真剣にクリエイターのキャリアを考えてくれる企業を他に知りません。プロとして働く覚悟と成長する意欲がある方には、ぜひ来ていただきたいと思います。"クリエイター・ファースト"な企業ではありますが、学校ではないので、たとえ未経験でも基礎知識がすでにある人、自分から学ぶ意欲がある人を歓迎します。
2DCG PlaNet Studioでは、クリエイターを積極採用中です!詳しい求人情報やご応募方法は下記URLからご確認ください。
https://2d-studio.crdg.jp/recruit/#Contactform-r
2022.04.28