アニメーションの美術監督・背景画家として数々の名作に携わってきた山本二三(やまもと・にぞう)。24歳の若さで宮崎駿監督の「未来少年コナン」の美術監督に抜擢され、その後も「天空の城ラピュタ」「火垂るの墓」「もののけ姫」「時をかける少女」など、数々の名作に携わり、日本アニメーション界をけん引してきた。物語の舞台を丹念に取材・設定し、実在しない空間の温度や空気感まで描き上げる緻密な仕事、そして卓越した水と雲の表現は、山本の評価を不動のものとしてきた。本展では、作者自選の直筆背景画、スケッチ、イメージボードなど、初期から最新作までおよそ230点が展示される。名作アニメの名シーンを支え、物語世界に説得力を与えてきた背景画の魅力とは何なのか、本展を通じて体感することができる。
山本二三が手がける水と雲の表現に注目
物語の舞台を丹念に取材、あるいは設定し、実在しない空間の温度や空気感までも描き上げる緻密な仕事、そして卓越した水と雲の表現は山本二三の評価を不動のものにしている。中でも山本が描く雲は「二三雲」と呼ばれており、単に背景の一部を構成するだけに留まらず、場面の空気感や登場人物たちの心情を表現することがある。特に、山本が美術監督を務めた「時をかける少女」では、「空」と「雲」の表現が主人公・真琴の気持ちを巧みに表していると評価されており、描かれたわき立つ積乱雲は物語の象徴ともいえ、真琴の高揚する思いが雲を通して描かれている。背景画がアニメーションにどれだけ必要なのか実感することができる一枚である。
佐川美術館限定作品も登場
今回の展覧会開催に合わせて描き下ろされた新作『卯月(うづき)の琵琶湖』を特別公開。開催地・滋賀にちなんだ、当館にも馴染みの深い琵琶湖が描かれた風景画であり、こちらも必見の一枚である。
2020.04.14
1953年長崎県五島市生まれ。アニメーション映画の美術監督・背景画家。有限会社 絵映舎代表。24歳の若さでNHKのTVシリーズの「未来少年コナン」(宮崎駿 演出)の美術監督に抜擢され、その後「天空の城ラピュタ」、「火垂るの墓」、「もののけ姫」、「時をかける少女」などの美術監督を務め、日本のアニメーション界をけん引する存在として、今日まで活躍を続けている。水と雲の表現に卓越し、中でも雲の描写は「二三雲」と呼ばれ、評価を不動のものとしている。2006年に「時をかける少女」(細田 守監督)の美術監督として第12回AMD Award'06 大賞の総務大臣賞を受賞。2018年には、故郷の長崎県五島市に「山本二三美術館」がオープンした。
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