「平成美術:うたかたと 瓦礫 デブリ 1989-2019」が京都市京セラ美術館で開催
2021.1.23 Sat. - 4.11 Sun.

経済的な停滞と未曾有の災害に繰り返し見舞われた平成の時代を探る。

           

「平成美術:うたかたと 瓦礫 デブリ 1989-2019」が京都市京セラ美術館で開催


京都市京セラ美術館の新館「東山キューブ」にて、2021年1月23日(土)から 4月11日(日)まで、「平成美術:うたかたと 瓦礫 デブリ 1989-2019」が開催される。

企画・監修には、1980年代後半より現代美術について鋭い批評活動を継続的に行なっている美術評論家の椹木野衣を迎え、本展では、独自の視点で選定したアーティストたちによる集合的活動にフォーカスした平成年間(1989-2019年)の美術を振り返る。

「うたかた」と「瓦礫(デブリ)」をキーワードに、経済的な停滞と未曾有の災害に繰り返し見舞われた平成の時代を、椹木の視点にもとづきアーティストたちがどのように時代と状況に応答してきたかを探る。



  • 会期2021年1月23日(土)- 4月11日(日)
  • 開催場所京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」
  • 開館時間10:00-18:00(最終入館は閉館の30分前まで)
  • 休館日月曜日(祝日の場合は開館)
  • 観覧料(税込)一般2,000円(1,800円) 大学・専門学校生1,500円(1,300円) 高校生1,000円(800円)小・中学生500円(300円)未就学児無料
    *( )内は20名以上の団体料金
    *京都市内に在住(通学)の小・中学生は無料
    *障害者手帳等をご提示の方は本人及び介護者1名無料
    ◎「平成美術展」をお得にお楽しみいただけるチケット:
    ペア割チケット:一般チケット2枚で3,500円
    平成割:平成生まれの方は1,800円(一般のみ)ほか、その他割引あり。
  • 主催平成美術展実行委員会(京都市、朝日新聞社)
  • 企画・監修椹木野衣
  • 協賛ミネベアミツミ株式会社、株式会社サンエムカラー
  • 公式ホームページhttps://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20210123-0411




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いま、不穏と呼ぶしかない令和の幕開けの渦中にあって、改めて31年あまりに及んだ平成の美術とは何であったのかについて、ここ京都の地から振り返って
みよう。1980年代、1990年代というような10年間(の傾向)で区切るのではない。「明治」の美術が、日本における美術そのものの夜明けであったように、「大正」の美術が、自我を持った絵描きたちによる叫びと前衛の新興であったように、「昭和」の美術が、戦争の前後で光と影のような対照を見せ、その後、民主主義と平和憲法に倣い、数々の分派へと枝分かれしていったように、そのような輪郭だった美術の容貌(精神)を、果たして「平成」の美術は持っているだろうか。ここではそれについて、自然災害や事件、事故、経済危機が多発した時代における、複数の美術家たちによる「密」な集合的活動の集積として捉え、バブル経済の崩壊と東日本大震災(福島原発事故)を念頭に、鴨長明『方丈記』と磯崎新『瓦礫(デブリ)の未来』に倣って、「うたかたと瓦礫(デブリ)」と呼ぶことにしたい。

------椹木野衣

椹木野衣(さわらぎ・のい)
美術評論家。1962年埼玉県秩父市生まれ。京都で学生時代を過ごす。現在、多摩美術大学教授。主な著書に、初の評論集『シミュレーショニズム----ハウス・ミュージックと盗用芸術』(洋泉社、1991)をはじめ、『日本・現代・美術』(新潮社、1998)、『反アート入門』(幻冬舎、2010)、『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎新書、2015)、『後美術論』(美術出版社、2015、第25回吉田秀和賞受賞)、『震美術論』(美術出版社、2017、平成29年度[第68回]芸術選奨文部科学大臣賞)ほか多数。「日本ゼロ年」展(水戸芸術館、1999-2000)をはじめ、展覧会のキュレーションも多く手掛けている。



展示構成と出展作家
平成の14のアーティストグループおよび集合体の代表作が一堂に会します。
そのほか資料展示などに加え、社会的事件、経済的事象や自然災害といった揺れる大地の上で、美術がどのような変遷をたどってきたかをまとめた平成の大年表を制作、展示します。
本展は下記のとおり、大きく3つの時代で区分され、会場では、「方丈」の庵のように作品群やブースが点在し、それらを回遊するような「界隈(ストリート)」で繋ぎ、平成の時空を縦横に行き来してご覧いただける構成になっています。



本展を構成する3つの時代区分とアーティストグループおよび集団

1989-2001
---- ベルリンの壁崩壊/ 湾岸戦争/バブル経済崩壊/阪神淡路大震災/地下鉄サリン事件 ----

Complesso Plastico(1987~1995、大阪/東京)
平野治朗と松蔭浩之が大阪芸術大学在学中に結成。音と映像によるインスタレーション作品で注目を集め、1990年にヴェネチア・ビエンナーレに招聘された。

IDEAL COPY(1988~、京都)
京都でデビューし、1990年代以降国内外で多彩な活動を展開してきた匿名アートユニット。日常の社会システムに着目したコンセプチュアルな作品で知られる。

テクノクラート(1990~1996、東京)
演劇出身の飴屋法水を中心としたアートユニット。1996年メキシコでの展示を最後に発表はしていない。機械とバイオテクノロジーを用いた身体的かつコンセプチュアルな作品を特徴とする。

DIVINA COMMEDIA(1991~、京都/神戸)
ダンテの『神曲』をその名に冠したプロジェクト。京都市立芸術大学に学んだ砥綿正之と松本泰章を中心に活動を開始し、音と光の明滅による「死のプラクシス」をテーマにした作品が話題を呼んだ 。
(展示協力: 株式会社インターオフィス)

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[参考図版]
Complesso Plastico 《LOVE AND GOLD Tokyo Version》
1989年
Photo: Oguma Sakae



2001-2011

---- アメリカ同時多発テロ事件/イラク戦争/新型肺炎SARS/リーマンョック ----

GEISAI(2001~2014、東京、神奈川、埼玉、台北、マイアミ)
日本の美術大学の学園祭(芸術祭の略称=芸祭)を由来とする、村上隆率いるカイカイキキが主催した大規模プロジェクト。出展アーティストはのべ1万人以上を数える。

Chim↑Pom (2005~、東京)
卯城竜太、林靖高、エリイ、岡田将孝、稲岡求、水野俊紀の6名からなるアーティストコレクティヴ。社会と結びついた美術の実践を通して、さまざまな問いを発信し続けている。

contact Gonzo (2006~、大阪)
独自に生み出された身体表現の方法論をユニット名とするグループ。現在のメンバーである塚原悠也、三ヶ尻敬悟、松見拓也、NAZEは、パフォーマンスを中心に国内外で活躍している。

・ 東北画は可能か?(2009~、山形)
「日本画」に対して「東北画」という名付けは可能か?という問いをもとにもう一つの美術史を模索する。東北芸術工科大学の三瀬夏之介と鴻崎正武が学生と研究・制作を行うプロジェクト。

・ DOMMUNE(2010~、東京)
宇川直宏が開局した日本初のライブストリーミング・スタジオ兼チャンネル。2014年よりアーティストインタビューの番組「THE 100 JAPANESE CONTEMPORARY ARTISTS」シリーズを継続。

<資料展示>
カオス*ラウンジ(2009~,東京)
インターネット上の交流から生まれたアーティストたちの集合体。資料展示にて振り返る。



2011-2019

---- 東日本大震災/福島第一原発事故/拡大するテロリズム/多発する自然災害 ----

パープルーム(2013~、神奈川)
梅津庸一が立ち上げた共同体。パープルーム予備校を拠点に美術活動と日常生活を同期させながら「日本の美術教育のオルタナティブ」と「美術運動」を実践している。

突然、目の前がひらけて(2015~、東京)
当時、武蔵野美術大学と朝鮮大学校の学生であった市川明子、土屋美智子、灰原千晶、
鄭梨愛(チョン・リエ)、李晶玉(リ・ジョンオク)の5人が両校の交流展に際して両者を隔てる塀に橋を架けた。本展で3度目の結集となる。

クシノテラス(2016~、広島)
櫛野展正により広島県福山市にて設立されたアウトサイダー・アートのギャラリー。現代アートシーンとは異なる世界で制作を行う全国各地の表現者たちを見出して紹介している。

國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト(2016~17、京都)
自作を調整中、事故により急逝した國府理の作品《水中エンジン》の再制作プロジェクト。遠藤水城、白石晃一、高嶋慈、はがみちこにより2017年に発表、本展ではこれを再構成して展示する。

人工知能美学芸術研究会(2016~、東京)
中ザワヒデキと草刈ミカを中心に結成された研究会。AIは独自の美学を持ち得るか、自前の芸術を創作し得るかを探求する。公開の研究会や、展覧会やコンサートの開催など多方向に活動している。

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灰原千晶、李晶玉 《区画壁を跨ぐ橋のドローイング》
2015年



本展の見どころ
①平成年間(1989-2019年)の日本の現代美術を大胆に総括する初めての大規模展!
平成初頭に活動したテクノクラートを皮切りに、現在も活動を続けるChim↑Pom、東北画は可能か?ほか、平成の14のアーティストグループおよび集合体が勢揃いします。

②関西のアートシーンからも厳選して紹介!
関西ニューウェーブを担ったComplesso Plastico やDIVINA COMMEDIA、そしてIDEAL COPY、およびこれらに続くcontact Gonzo、國府理「水中エンジン」再制作プロジェクトなど、関西ゆかりのアーティストの重要な活動を作品で振り返ります。

③平成のオルタナティブな表現を再考!
平成を特徴づけるゆるやかな個人の集まりである「集合的アーティスト」のグループやプロジェクトによる多様な「作品」のあり方を、映像やインスタレーションで見つめ直します。GEISAI、DOMMUNE、パープルーム、クシノテラス、人工知能美学芸術研究会の平成年間の作品を紹介します。

④登れる!渡れる!展示室の中央に巨大な橋が出現!
「突然、目の前がひらけて」のチームが、隣り合う二つの大学の間の壁にかつて架けた橋を再現。会場全体を俯瞰していただけます。 

⑤圧巻の「平成の大年表」が登場!
松本弦人デザインの幅約15メートルにおよぶ「平成の大年表」で、集合的アーティストの活動を中心に、揺れ動いた平成を映しだす日本の現代美術の変遷をご覧ください。

*今後の新型コロナウイルス の感染拡大状況によっては、更に内容を変更する場合があります。

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東北画は可能か? 《方舟計画》
2011年
Photo: SENO HIROMI (FLOT)


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[参考図版]
the council of divina commedia (towata+matsumoto)《DIVINA COMMEDIA》
1991年
Photo: Fukunaga Kazuo © TOWATA-MATSUMOTO


Build-Burger.jpg
[参考図版]
Chim↑Pom《Build-Burger》
2016年
Photo: Morita Kenji
Courtesy of the artist, ANOMALY, MUJIN-TO Production
関連情報
デザインノート
アイデア
イラストノート